江戸の歳時記
夏(4月~6月)
4月
4月は卯月(うづき)の名のとおり、卯の花の咲く季節です。卯の花が咲く時期、江戸の空にはホトトギスが姿を現わします。またこの時期は江戸の人々がこよなく愛した初鰹(はつがつお)の季節でもあります。山口素堂(1642~1716)が詠(よ)んだ「目には青葉山ホトトギス初鰹」とは、まさに江戸の町に初夏を告げる風物詩を並べた歌なのです。
5月
武家社会では5月5日の端午(たんご)の節句は後継ぎとなる男子の成長を願う大切な儀式でした。端午の節句が男子の節句となったのは江戸時代のことと言われています。武家階級では家紋をしるした旗指物(はたさしもの)や幟(のぼり)、吹流しなどの武家飾りを玄関前に並べて祝い、これに対抗して庶民は江戸中期頃から武具がわりに鯉のぼりをたてて祝いました。空にたなびく鯉のぼりの姿は昔も今も変わらぬ風景です。また、魔除けのために家々の軒先には菖蒲が飾られていました。
6月
真夏の6月、江戸の町は祭一色に染まります。5日から14日は、神田明神の天王祭の神輿(みこし)行列が賑やかに練り出します。15日には江戸三大祭の一つで、幕府公認の天下祭であった日枝神社(ひえじんじゃ)の「山王祭」が絢爛豪華に行われます。そのほか品川天王祭、赤坂氷川神社の祭礼なども6月に開催されました。人々が密集して暮らしていた江戸の町の人々にとって、疫病除けの意味を持つ夏祭りは非常に大切なものでした。
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