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盾鼻隨聞録　八巻　清兪泰生　樗園退叟・魯齋編　伊藤之幹校　浪華伊藤氏刊　3冊
市村文庫　市049-IW-44

中国清の時代の1851年、洪秀全が中国南部で太平天国の乱を起こした。『盾鼻隨聞録』（とんびずいもんろく）は中国革命の先駆とされるこの乱の初期、咸豊3年（1853）9月までの戦闘と、関係する雑筆や詩篇を、清国側の史料を基に記録している。本書は日本での覆刻版である。
掲出した巻一は、洪秀全をはじめとする諸将の出身と、咸豊2年3月までの記事を記している。画像中4行目の上から8字目「巴都統」の「統」が一画欠筆となっている。欠筆とは、帝王の名に相当する漢字を避けて一画を書かないことで、唐代にはじまり、宋代に最も顕著だった。日本でもこれに倣い行われた。「和刻本明清資料集」（汲古書院1974）長澤規矩也解題によると、本書は刊記がないが、「統」は孝明天皇（1831-1866）の諱（いみな）であるので、幕末の刊刻であろう、としている。