9.近世奇跡考
山東京伝著 五巻五冊 文化元年(1804)刊 大和田安兵衛・河内屋太助 請求記号:加10624
近世初期の市井の風俗、人物の逸話、旧蹟の情報などを、古書画をもとに、また京伝自身がその場所を訪れたりして考証した随筆です。京伝は、典拠とした資料を示しながら緻密な考証を行っています。「人倫訓蒙図彙(じんりんきんもうずい)」(著者未詳 元禄3年(1690)刊)や、「新著聞集(しんちょもんじゅう)」(一雪(いっせつ)著 神谷養勇軒(かみやようゆうけん)編 寛延2年(1749)刊)など、現在でも風俗・説話研究に使用される資料が多数引用されています。
この中に取り上げられた事物や人物が、文化年間の京伝の読本・合巻に取り入れられている例も多く見られます。遺作となった、未完の「骨董集」とともに、江戸時代の風俗史研究の貴重な資料となっています。