移転オープン記念トークイベント「読書のすばらしさ、たくさんの出会い」

平成29年1月29日(日)に、中江有里さんをお招きして移転オープン記念トークイベント「読書のすばらしさ たくさんの出会い」を行いました。

トークイベントは司会者との対談形式で進められ、お二人の息の合ったやり取りに参加者の方々がどんどんと引き込まれていくようでした。
中江さんの写真

事前にお寄せいただいた中江さんへの質問やおすすめ本のリクエストも随所に盛り込まれ、最後の朗読まであっというまの90分となりました。

以下、中江さんのお話の一部をご紹介します。

多摩図書館の印象

 

講演会の前に書庫を見学させていただきました。雑誌の創刊号コレクションがすごいですね。雑誌だけでなく、山本有三文庫など貴重なものがたくさんあって、ここで一生暮らせるなと思いました。住めたらいいなというくらいでした。

読書の習慣について

本を読むということは習慣だと思っています。たまにやるよりも持続してやっていくことが大事です。読む力は日々読むことで鍛えられていくものだと思います。私は想像力、読解力、集中力のこの三つの力を合わせて読書力と呼んでいます。読書を娯楽と思われる方は多いでしょうし、実際そうですが、生きる上で力というか応用力がとてもあるんです。私は本が好きで、それが高じて本を紹介したり、書評を書いたりしていますが、本にすごく助けられたという思い出があります。

小さいころから本が好きだったのかという質問について

 

じつは一番小さいころは文字が好きで、文字が読めないときには何と書いてあるのかと思って辞書などを眺めるのが好きでした。そこから本に出合って、小学校に上がってからはずっと本は好きです。
小さいころのお気に入りは病院の待合室にあった『わたしとあそんで』(マリー・ホール・エッツ著)で、表紙の女の子と目が合ったことをよく覚えています。この本は手元に置いておきたくて大人になってから自分で買いました。

思い出深い本

 

高校1年生でこの仕事(女優業)を始めたのですが、大阪から一人で上京してきてホームシックにかかってしまったんです。仕事もうまくいかなくて、学校にもまだなじめなくて、この先どうしようかと悩んでいた時に出会ったのが『砂の城』(遠藤周作著)だったんです。
主人公が16歳の女の子で自分と同じくらいで、なんとなく思い入れを持って読みました。
中でも一番印象に残っているのが「負けちゃだめだよ。美しいものは必ず消えないんだから。」というセリフで、私はこのセリフがとても自分の胸に沁みまして。東京に出てきて自分が今のままじゃどうにもならなくて、何か変えなきゃいけないんだけど、何か変えてしまうと今までの自分でなくなってしまうんじゃないかと不安な気持ちに駆られていたけれど、このセリフに自分の心の芯にある感情とかそういうものはそんな簡単に変わるものじゃないんだと思えて、非常に励まされたんです。たった一言のセリフが、心境を変えてくれることがあると感じられた非常に思い出深い一冊です。
何年か後に読み返した時にやっぱり同じ部分で胸に来まして、そうしたら、そこのところのページの端が折ってあったんです。こういう風に同じ本を繰り返し読むということは自分がその時感じたものがここにあったということの印にもなるし、その時と自分があんまり変わってないんだと確認する機会にもなる。まさしく自分の中で芯にあるものが、変わらないまま来てるんだと思いました。
本との出会いは人との出会いと一緒で、その時よく分からなくても、その後になってあの本に出会っておいて良かったな、読んでおいて良かったなと思える瞬間が来る気がします。

俳優 児玉清さんとの思い出について

 

週刊ブックレビューで共演した5年間で、児玉さんの司会術に触れることができ、今こうしたいんじゃないかなとか阿吽(あうん)の呼吸みたいなものができたのが非常に楽しかったです。この5年間がなかったら、その後の3年間に一人で司会を務めることは難しかったと思います。
児玉さんは本に関しては一途で、ベテランの作家さんもデビューしたばかりの作家さんも同じようにリスペクトしてお話を伺っていかれるんです。紳士でクールなイメージがあるんですけど、その一方で本に対してはとても熱い方でした。それだけでなくユーモアもある方で本当に大好きでした。

たくさんの本を読む併読と未来のための積読とは…

 

たくさんの本を読むために、何冊かを同時に読むんです。家で読む本、出先で読む本など複数の本をシチュエーションに応じて読み分けていて、これを併読と呼んでいます。もともとは「週刊ブックレビュー」で週に4冊の本を読まなければいけなくて、それで自然と始めました。これが意外と効能があるなと思って、色々なところでおすすめしています。コツは読んでる内容が混ざらないように「ジャンルを分ける」ことです。
本を選ぶときには直感のときもありますし、調べたりもします。好きな書評家の方のおすすめの本や新聞雑誌の書評とか、作家の方が進めている本はやっぱり気になります。自分でアンテナを立てて探していくのが非常に大事です。
私は買ったものの読まずに本を部屋に積んでおくことを「積読(つんどく)」と言っています。なんとなく後ろめたく感じるかもしれないですけど、私はこれは自分が気になって手に入れた本だからそのうち読むだろうと思って置いてあるんです。後でと思っていると絶版になってしまうこともあるので、自分が気になった本はまずは手に入れておくことが大事です。積読は自分が未来に読む本だと思われるといいんじゃないかなと思います。

雑誌や新聞への思い

 

意外と雑誌の創刊号はよく買います。雑誌を出そうとした人の気合いとかテーマとか詰め込まれている感じがして、そこには今から出港しようとする船がどこに向かうのかって感じで、雑誌の創刊号は読んでいて面白いんです。あと、古い雑誌とか新聞を見るのも好きです。広告とかラジオ・テレビ欄とか当時の様子が良く分かって面白いです。

作家活動について

 

書き手になったきっかけは、28歳の時に出演を予定していた映画撮影が直前に中止になってしまい、 撮影にあてる予定だった期間が空いてしまったころのことです。その時にこのままこの期間を無にするのは嫌だなと思って、それで中学生のころからの夢だった脚本を書こうと思い立って、NHK大阪のラジオドラマ懸賞に応募したんです。
演じることと書くことの相互作用みたいなものはあって、演じた時に違和感のあるセリフはなるべく避けるとか、そういった強みを活かしながら書いています。
苦しい時は何を書いても苦しくて、書いている間はどうやってまとめようか迷いながら書いているんですけど、最終的になぜかちゃんと着地するっていうところが自分では計算できなくて、でもそこが面白いんです。

読書の効能について

 

本が読めるとプラスになることが多いんです。すぐに役に立つものではないかもしれないですけど、なんらかの自分の支えになってくれたり、ヒントになってくれたり、そういう非常に息の長いものなんです。読書っていうのは自分のかけがえのない経験ですし、あるいは友達でもあるし、先輩でもあるし、いろんな意味で本当に大事なものですね。

朗読と作品への思い

 

今回選ばせてもらったのは北条民雄の『いのちの初夜』です。
北条民雄はハンセン病を患って施設に入ってから作家デビューを果たしていて、この作品は初めてハンセン病施設内を題材とした作品ということでも有名です。
実は今日(1/29)は世界ハンセン病の日です。ハンセン病患者の方が差別された歴史を忘れてはいけないという願いを込めて選びました。
朗読するときにはとにかくゆっくりと朗読しようというのは意識していますね。自分自身が読むスピードはもっと速いんですけど、そうではなくてやっぱり皆さんと味わう読書だと。耳で聞く読書ですから、そういう意味ではなるべく自分というものを消し去って、一つの音として声として朗読をしたいなと。それだけは思いますね。

参加された方の感想

 

  • 本を読む時間の作り方、読み方について知ることができてよかった。
  • 中江さんの考え方について知ることができ、とても貴重な経験になりました。紹介されていた本には、帰りに探したいと思わず思うような中江さんの言葉の魅力がありました。
  • 読書は好きですが、いろいろな本を紹介して頂いて、ますます本を読みたいと思いました。私も併読しているのですが、それはいい事なのだと分かりうれしかったです。
  • 読書についてのエピソード、考え方をいろいろ聞け、改めて読書を考える・読書をはじめるキッカケができた。
    本との出会いは人との出会いと一緒であるとの言葉が印象的であった。

当日取りあげられた本

 

トークイベントでは参加者の方から事前にお寄せいただいた質問やおすすめの本のリクエストに中江さんから答えていただきました。
中江さんがトークイベントの間に触れられた図書は以下の通りです。
中江さんの写真
  • 小さいころのお気に入りの本
    『わたしとあそんで』 マリー・ホール・エッツ/文・絵 福音館書店 
    請求記号E/エ1/13 資料コード1104043207
  • 思い出深い本
    『砂の城』 遠藤周作/著  主婦の友社
    請求記号 J360/エ2/27 資料コード 1122472728
  • 最近読んだ中でおすすめの本
    『静かな雨』宮下奈都/著 文藝春秋
    請求記号 913.60/ ミ2196/ 613 資料コード 7108395610
  • 最近感動した本
    『美しい距離』 山崎ナオコーラ/著  文藝春秋
    請求記号 913.60/ヤ2142/619 資料コード 7107660484
  • ちょっと元気がない時の私
    『ハリネズミの願い』 新潮社 トーン テレヘン/著
    請求記号 949.3/テ2083/601 資料コード 7108403187
  • 今いる世界から一歩踏み出したい青少年
    『颶風の王』 河崎秋子/著 KADOKAWA
    請求記号 913.60/カ2522/ 601 資料コード 7106128126
  • スマホばかり見ている人
    『活版印刷三日月堂 星たちの栞』ポプラ社 ほしおさなえ/著
    請求記号 S/913.60/ホ2062/607 資料コード 7108467003
  • 怒りたくなる時の私
    『苦手図鑑』北大路公子/著
    ※この作品は『野性時代』(KADOKAWA)で連載されていたもの。
     『野性時代』9巻3号通巻88号(2001年3月)~10巻6号通巻103号(2012年6月)
  • 何を読めばいいか迷っている人
    『ホンのひととき 終わらない読書』 中江 有里/著 毎日新聞社
    請求記号 019.9/ 5413/ 2014 資料コード 7104049650
  • 朗読された本
    『いのちの初夜』北条民雄/著 角川書店
    請求記号 S/ 9136/ ホウシ 資料コード 111083009

このページの先頭へ▲