「東京マガジンバンクカレッジ」キックオフ記念講演会 「雑誌の過去・現在・未来」当日の様子

 平成29年3月12日(日)に、東京マガジンバンクカレッジ キックオフ講演会「雑誌の過去・現在・未来」を開催しました。
 また、講演とあわせて講師の著書等の展示を行いました。
 当日の講演の概要を掲載しますので、ぜひご覧ください。



            鼎談の様子

1 講師

 清水 一彦(しみず かずひこ)氏
 江戸川大学メディアコミュニケーション学部教授、元『POPEYE』編集長

 難波 功士(なんば こうじ)氏
 関西学院大学社会学部教授

 辻 泉(つじ いずみ)氏
 中央大学文学部人文社会学科教授、社会情報学専攻

2 会場

 東京都立多摩図書館 セミナールーム(2階)

3 プログラム

  •  各講師による講演
  •  講師による鼎談
  •  フロアからの質疑応答
  •  当館職員による「マガジントーク」
  •  マガジンバンクカレッジパートナー登録の説明
  •  バックヤードツアー

4 内容紹介(お話しいただいたことの一部を紹介します。) 

各講師による講演

「雑誌の過去」難波氏

 大学では広告論、メディアカルチャー論を教えている。自身も雑誌の創刊号を収集しているが、創刊号は模索や戸惑いが見られるため、面白い。
 最近の面白い雑誌は『KERA』。読者を繋ぐページが減少する傾向にある中、紙面上で文通ペンフレンドを募集している。
 『KERA』に見られるように、かつては雑誌のファン集団が存在し、読む雑誌によって文化が形成されていた。しかし、この20~30年の間、雑誌に勢いがなくなってきている。
 (残念ながら、その『KERA』も4月15日(土)発売の6月号をもって紙媒体での発行を終了となった)


「雑誌の現在」辻氏

 大学で担当している学部横断型ゼミでは、雑誌やインターネット情報といったポピュラー文化を通して、メディアの実態や問題点について学んでいる。今年の研究対象は趣味雑誌。出版業界が右肩下がりの中、趣味雑誌は、休刊している雑誌が少なく発行部数への影響も他のジャンルに比べて小さい。
 趣味雑誌が他の雑誌より相対的に見て「まだマシ」なのは以下の三つの理由がある。

  • 独占的なキラーコンテンツがある。
  •  
  • 物質性をもった商品の魅力がある。
  •  
  • 余人をもって替え難いスタッフが編集部にいる

  • しかし、この理由は持続するものではない。
     雑誌をめぐる現状と課題を踏まえた上で、従来の紙媒体の雑誌(「雑誌1.0」)の「野辺送り」を行い、「雑誌の最良の部分」を媒体にかかわらず再構成した雑誌(「雑誌2.0」)の「誕生祝い」をする必要がある。

     

    「雑誌の未来」清水氏

     雑誌に未来はある。雑誌のコンテンツとメディアを分けて考えることが必要。紙というメディアにこだわらず、時代に対応できる出版社の売上比率は多様化している。
     例1)雑誌ブランドを利用した物販
     例2)dマガジン
     例3)アメリカ雑誌協会360°
       いろいろな角度で雑誌ブランドを使って儲けている。
     例4)日本から世界に発信する
       『pen』のシンガポール版、パリ版
       単なる名前貸しではなく、自社でコンテンツを作っている。


    鼎談

    辻氏:紙の雑誌は滅びるか。紙の意味とは何か。
    難波氏:雑誌をめくるという付き合い方は残ってほしい。
    清水氏:紙も残ると思う。メインではないかもしれないが、モノカルチャーは出版社も読者も困る。
    辻氏:(難波氏に)インターネット上に共同体はできるのか。
    難波氏:共同体は実際に存在する。雑誌は雑誌で残るが、今後ネットに移行していく。
    辻氏:(清水氏に)コンテンツが面白ければメディアにはこだわらない、という時代だが、メディアは全てスマートフォンになってしまうのか。
    清水氏:雑誌は物質的な意味を持ち、その場の楽しみはスマートフォンになってくる。

    清水氏:(辻氏に)雑誌をゼミの研究対象としているようだが、学生はなぜ自分が読んでいない雑誌を研究しているのか。
    辻氏:面白い体験をしたい、と学生は言っている。
    清水氏:「面白い」とは、自分自身が編集者として「面白い」ものを伝えたいのか、「面白い」ものが見たいのか、どちらか。
    辻氏:両方。

    辻氏:雑誌が右下がりになっている時代に都立多摩図書館がリニューアルオープンした意義は。
    清水氏:都立多摩図書館は過去の文化遺産としては素晴らしい。今後はコンテンツが無形化したデータを集めてほしい。次のステップを期待したい。
    難波氏:コンテンツと読者が繋がる場となってほしい。雑誌が集まる意義としては、歴史資料館としての価値がある。今後、電子情報をストックする役割を担ってほしい。

    質疑応答

    Q1:雑誌は大型化する傾向にあるのか。

    A1:清水氏:女性誌は今小型版併存化が進む傾向にある。ただ、雑誌の判型は時代に影響される。ニーズがあれば、大型化するのでは。


    Q2:雑誌が紙でなくなることによって、質が高いコンテンツを作るスキルが失われるのではないか。

    A2:清水氏:紙よりWebのほうが質が低い、といった偏見はすぐになくなる。消費者が質の高いものでなければ消費しない時代なので、取材や校閲もきちんとするようになるはず。


    Q3:紙の雑誌はどのような条件で消えるのか。

    A3:難波氏:出版社から人が移っていくこと、またジャンルごとに1誌に集約されることで紙の雑誌は消えていくかもしれない。


    Q4:雑誌とジェンダーの問題について。女性誌、男性誌の雑誌における共同体はどうなるのか。また、女の子の共同体の展望は。

    A4:難波氏:女性誌から男性誌が派生する例が今後多くなる。共同体はジェンダー別化する動きもあれば、ジェンダーの垣根がなくなる動きもある。女の子のコミュニケーションは、メールやSNSの絵文字やスタンプが大事となってくる。


    Q5:雑誌はどのような価値を伝えるメディアになり得るのか。

    A5:辻氏:雑誌は説教するメディアであり、提案するメディア。「これが面白い」と価値を示すことができる。
    清水氏:雑誌が生み出す共同体はコミュニケーションを作る核となる。昔は一人の人間の中に一つのアイデンティティが存在していた。現代は一人のなかに複数のアイデンティティがありそれらの総体が一人の人格をつくっている。そのため、多種多様な共同体が必要で、もっと増加することが求められている。
    難波氏:人々の切実なニーズを満たすことができるのが雑誌。

    Q6:何のために文化を研究するのか。雑誌の研究意義とは何か。

    A6:辻氏:面白いことが好きで、雑誌は面白さの集積。雑誌のバックナンバーからは様々な時代の面白さを感じることができる。
    清水氏:どんなことが価値を持つのかを考えることができる。そうすることで、現代人の本性をたどることができる。
    難波氏:面白いコンテンツを作りたいから、雑誌を研究している。




    会場全体の様子
    会場の様子
    講演の様子
                講演の様子

    5 参加者の声

    • 雑誌の「過去」「現在」「未来」を3名の先生に分けてお話し頂いて分かりやすかったです。
    • 雑誌の役割、これからの姿などヒントをいただけた。雑誌の未来に正直希望をもてていなかったのですが、自分の生活と重ね合わせて、うなずけるお話がいただけて、とても面白かった。
               

    6 当館職員によるマガジントーク

    当日は当館職員がテーマに沿っていくつかの雑誌と簡単な内容を紹介する「マガジントーク」を実施しました。

    マガジントーク① テーマ:「数」

    紹介した雑誌

  • 『ヴァンサンカン』 1号(1980年6月), 450号(2017年3月)
  • 『百万塔』      1号(1955年3月), 150号(2015年12月)
  • 『ナンバー』    1巻1号通巻1号(1980年4月20日), 臨時増刊号(2016年11月25日)
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    マガジントーク② テーマ:「小京都」

    紹介した雑誌

  • 『金澤』 14巻5号通巻100号(2011年5月)
  • 『旅』  71巻9号通巻848号(1997年9月)
  • 『国士舘人文学』 5号通巻47号(2015年3月)
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