東京マガジンバンクカレッジ雑誌総合セクション「雑誌解体!」当日の様子

 平成29年3月26日(日)に、東京マガジンバンクカレッジ 雑誌総合セクション「雑誌解体!」を開催しました。
発表は中央大学FLPジャーナリズムプログラム辻ゼミナールの学生の方が行いました。FLP(Faculty Linkage Program)とは学部横断型の教育システムで、特に辻ゼミナールには雑誌への熱い思いを持った学生が集まり研究に取り組んでいます。
今回は趣味雑誌に焦点を当て、雑誌の現状と今後の課題について発表しました。
また、発表とあわせて発表内容のパネルと関連雑誌等の展示を1階展示エリアにて5月12日(金)~6月12日(月)まで行いました。
以下に当日の発表の概要を掲載しますので、ぜひご覧ください。



                        発表の様子
                                   

1 発表                           

辻 泉(つじ いずみ)氏
中央大学文学部人文社会学科教授、社会情報学専攻

中央大学FLPジャーナリズムプログラム辻ゼミナールの学生                           

2 会場                           

東京都立多摩図書館 セミナールーム(2階)

3 プログラム

  •  ゼミ紹介、研究テーマ・雑誌概要
  •  『Number』発表
  •  『Myojo』発表
  •  『週刊ファミ通』発表
  •  講評・質疑応答
  • 当館職員と中央大学生による「マガジントーク」
  • 「東京マガジンバンクカレッジ」パートナーのご案内
  • バックヤードツアー

4 内容紹介(お話しいただいたことの一部を紹介します。)

研究テーマについて

まず辻教授からゼミでの研究テーマと趣味雑誌全体の現状についてお話しいただきました。

辻ゼミの研究について

 このゼミではポピュラー文化に関連するメディアの実態について、広く理解を深めることを目的としている。具体的には関連文献の読解から始まり、メディア情報の内容分析や情報発信現場への訪問調査なども行っている。2016年度は趣味雑誌の現状と課題把握、今後の展望としてのオルタナティブメディアの探求を行った。
趣味雑誌が他の雑誌より相対的に見て「まだマシ」なのは以下の三つの理由がある。

趣味雑誌の現状について

販売部数は減ってきているが、他ジャンルほどではない。また、掲載広告が少ないので、不景気の影響を受けにくい。趣味雑誌の落ち込みが他ジャンルほどでない理由として以下が考えられる。

  • 独占的なキラーコンテンツがある。
  • 物質性をもった商品の魅力がある。
  • 余人をもって替え難いスタッフが編集部にいる
  • これらの要素はインターネットコンテンツにはまだ乏しい。

    今後の課題について

    現状の売り上げが今後も続くとは楽観できない。また、前記に挙げた特徴についてもその優位性が保たれていくとは考えにくい。
    そこで紙vsインターネットという二項対立を乗り越えたうえで、「雑誌1.0の野辺送り」をして根拠に乏しい回顧主義を相対化し、「雑誌2.0の誕生祝い」として交流の場としての機能のような「雑誌の最良の部分」を再確認・再構成する必要があるのではないか。
               

    辻教授のお話に続いて、3つの班の発表を行いました。 

    『Number』

    雑誌概要

    • 出版社:文藝春秋
    • 創刊:1980年4月
    • コンセプト:全スポーツ分野を対象とする総合スポーツ誌
    • ターゲット:大学生~30代の男性が中心
    • ウェブサイトや書籍など多面展開も行っている。

    読者の特徴

    • 過去もしくは現在に何らかのスポーツ経験がある。
    • スポーツとは別に趣味を持っている。
    • 自分の気になるスポーツや特集の時のみ購入することが多い。
    • 読み終わってもほとんどを保管している。
    • 読者にはテレビの裏場面を覗いているような深いインタビューや選手をストーリーのように描く手法が支持されている。

    編集長へのインタビュー

    Q.キーコンセプトとは。
    A.結果の勝敗だけでなく、「スポーツを通じて見えてくる人間の物語」を届けること。
    Q.大切にしていることは。
    A.「人間」「当事者主義」「言葉」を大切にしている。人を面白がるのも売り。
    Q.特集や表紙の決め方は。
    A.特集は2~3か月前に会議して決めるが、タイムリーな記事があった場合は臨機応変に対応する。表紙はその時の特集のトーンに応じて決める。そのために何パターンか用意している。
    Q.出版不況の中でどうやっていくか。
    A.今後10年は紙媒体で出版していく。情報がフリーで得られる時代の中で、お金を払ってまで読もうと思う深い記事を書いて付加価値をつける。
    インタビューから、編集部が届けたい思いを読者がしっかり受け止めていることが見えた。

    ナンバーの課題と提案

    課題
    読者の大半は30~50代の男性で読者層に偏りがある。また、読者の意見を反映させにくい。

    提案
    選手の写真を掲載できるインスタグラムの活用。そして手薄になっている中高生や女性の読者の確保。

    ナンバーの今後

    • バックナンバーのデジタル化のようなアーカイブとしての価値
    • 本誌記事から再編集したリーダーシップ論の発信
    • スポーツと他ジャンルのコラボレーション
    唯一無二のスポーツ総合誌であり、東京オリンピック・パラリンピックもあるため、一気に衰退することはないが、先を見据えた新たな取り組みに挑戦する必要がある。

    『Myojo』

    雑誌概要

    • 出版社:集英社
    • 創刊:1952年『明星』
    • タレント:30代以下のジャニーズアイドルが中心

    高校生読者の声を反映した『ちっこいMyojo』を発売しており、こちらは普通版とピンナップが少し違う。

    読者の特徴

    • 中高生~大学生くらいの時期に友人の影響でジャニーズファンになっている。
    • ツイッターで情報収集するなど雑誌だけでなく複数のメディアを使っている。
    • 雑誌は他誌と読み比べをして決める。

     

    編集部へのインタビュー

    • ターゲットは中2女子で、「クラスの男子目線」を重視した誌面づくりをしている。
    • 読者の声を重視しており、アンケートはがきは全て見ている。

    ジャニーズとメディア

    <テレビ>テレビでは幅広い活躍をしており、好きになるきっかけにはなりやすいが、同時に多用も目立つ。また、週刊誌やネットニュースでの報道がテレビでは報じられないことから、事務所とのしがらみを感じる。
    <ラジオ>ほとんどのタレントがラジオの冠番組を持っている。『Myojo』編集部はリスナーとの距離が近いことから、CMを流すのにちょうど良いと評している。
    <雑誌>ファンにとって雑誌は手元に置いておくことができ、知識を深めた気分になるが、自分の好きなタレント以外にもお金を払うことになる。また、電子化がされない。

    『Myojo』の現状と予測

    ジャニーズ事務所によるネットでの写真使用の規制により、電子化はできない。しかし、だからこそ紙の雑誌が貴重という声もある。
    ネットの規制が解けるのは時間の問題だが、手元に置くことを重視する読者の傾向から、電子書籍化しても雑誌としての価値はあり続ける。

    ジャニーズの今後

    ジャニーズ=マスメディアという時代は終焉を迎えつつある。
    これまではネットが規制されていたためテレビや雑誌は貴重なメディアだったが、これからはネットコンテンツが主流になっていき、取り残されてしまうかもしれない。

    『週刊ファミ通』

    雑誌概要

    • 出版社:エンターブレイン
    • 創刊:1986年
    • ターゲット:10~20代の男性

    開発者インタビュー、ゲームレビューなど幅広いゲーム情報をビジュアルな紙面構成で伝えるゲーム情報誌。

    編集部へのインタビュー

    Q.コンセプトは。
    A.ファミ通はゲームの応援団。競合誌はライバルであり、仲間なので、一緒にゲームを盛り上げていきたい。
    Q.今後の動きは。
    A.ゲーム情報だけでなく読者企画やその他エンタメ情報も充実させていく。遊び心満載のもっと読者に楽しんでもらえるような雑誌にしたい。
    Q.ツイッターやニコニコ動画など多くのメディアを使っているが、雑誌以外のメディアについてはどう考えているか。
    A.「dマガジン」が凄い。他の雑誌と合わせて昔の読者がまた読んでいる。

    ファミ通の課題と提案

    課題
    読者のニーズと編集部の意向があっていない。また、多くのメディアと連携するも大きな盛り上がりがない。
    提案
    「新ファミ通転生」
    読者の望むゲーム情報が手に入り、電子媒体化することにより、ネットコンテンツとのリンクが可能になる。
    そしてゲーム会社の広報や読者へ場を提供することが編集部の役目となる。
    電子媒体化の利点は、雑誌よりも即時性があること、ほしい情報にすぐスキップできること、ネームバリューを活かせることがあげられる。ゆくゆくはファミ通のオリジナルゲームを作成し、読者とゲーム会社をつなぐ場としての雑誌となれば可能性が広がっていく。
    ファミ通には、雑誌以外のコンテンツが存在するが、それを雑誌としてうまく生かすためには紙媒体の雑誌だけではコンテンツを繋げにくい。よって電子媒体の形態になることにより、ネットコンテンツと直接リンクできる場としての形態が望ましいと考える。

    全体のまとめ

    『ナンバー』

    一強状態は年長世代(団塊Jr.)頼みである。スポーツを媒体にした多角化が未来ではあるが、出版者は気持ちはあるものの人手が足りないとのことだった。

    『Myojo』

    芸能事務所の特殊な事情で生き残っている状態。ネットを見られない人(中学生)を相手にするならば可能性はある。

    『週刊ファミ通』

    場として機能する可能性がある。ゲーム好きが集まって新しいゲームを作るなど、新コンテンツからファンの集まりにつながる。

    質疑応答

    Q.団塊Jr.が「野辺送り」されるにはあと30年は必要だと思う。ならばあと30年は大丈夫だと思うし、世代交代にこだわらずとも雑誌と読者がともに年を重ねていけばいいのではないか。
    A.それも有りだが、次の一手が必要。このままだと20~30年もつかわからない。

    Q.ナンバー一強状態なのはなぜか。他にいないのはどうしてか。
    A.以前は他のスポーツ総合誌があったが、なくなってしまった。今は専門誌はあるが、総合誌がない。『ナンバー』がグラフィックや有名ライター・カメラマンを握っていたため、他が撤退し、その代わり専門誌が増えた。一般のニュースのように一部のメディアにしか情報が出ないという問題がある。

    Q.『ナンバー』の世代交代について、現読者世代が物語を求めるのは日本人にスポーツジャーナリズムがないからだと思うが、若い人が読まない、つまり求めていないならばスポーツジャーナリズムが育って逆説的に世代交代できるのではないか。
    A.若者も年を取ると物語を求めるようになる。スポーツを題材にしたアニメや漫画が多数あることから若者は物語からスポーツに入っていると考えられる。また、ストーリを求めない若者であっても、年を重ねるうちに物語になじんでいくのではないか。

    Q.『ロッキング・オン・ジャパン』(当日展示されていた他班が研究した音楽雑誌)は昔読んでいたが、今は読まない。ロックフェスに行かないような上の世代向けの雑誌も作ると良いのではないか。
    A.今誌面で取り上げられているアーティストはやや古く、また固定化されている。上世代向けを作るならば、もう一世代若い人向けの雑誌も作るといいかもしれない。



    辻教授のレジュメ   雑誌解体!~ポピュラー文化とメディア変容~ (PDF 1.8MB)


    中央大学FLPホームページへのリンクはこちら




    会場の様子
    会場の様子
    展示の様子
          展示の様子

    5 参加者の声

    • ゼミ生のオルタナティブメディアの提案が思いつかないもので刺激された。
    • 現状に対する問題点を自分たちの視点で捉えられていたところが良かった。
    • 読者層の分析やネット社会での雑誌の存在意義についての情報が目新しかった。
               

    6 当館職員によるマガジントーク

    当日は当館職員と辻ゼミの学生の方がテーマに沿っていくつかの雑誌と簡単な内容を紹介する「マガジントーク」を実施しました。紹介した雑誌は以下の通りです。

    マガジントーク① テーマ:「天地人」

    紹介した雑誌

  • 『天開圖画』 1号(1996年)
  • 『地上』 70巻4号(2016年4月)
  • 『人工知能』 32巻2号通巻182号(2017年3月)
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    マガジントーク② テーマ:「私の好きな趣味雑誌」

    紹介した雑誌

  • 『美術手帳』 168巻1035号(2016年4月)
  • 『COSMAKE』COSPLAY MODE特別編集 (2015年10月)    当館未所蔵
  • 『ペルソナマガジン P5 special.』 電撃playstation増刊(2016年9月)  当館未所蔵
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