これからの図書館のあり方

2001年6月

大串夏身(昭和女子大学)

1,図書館を取り巻く状況の急激な変化

(1)世界史的な変革の時代の到来

 世界史的な規模で変化が進んでいる。それは、脱工業化社会の本格的な到来として表現できる。脱工業化社会は、1970年代アメリカで始まり、1980年代に日本も突入したと考えられる。脱工業化社会の特徴は、社会の隅々にコンピュータ通信ネットワークが張り巡らされ、主要な働き手が、技術者や専門職となることであり、そこでは知識のあり方は、従来の工業社会とは変わり、知識の量が飛躍的に増えて、そこから誰でもが知恵を生み出すことが出来る時代となった。

(2)国際的レベルでの情報化

(a)日本のブロードバンド普及状況

 今年2月のアメリカの調査会社の調査結果では、日本は、ブロードバンドの普及は世界の中で遅れていることが明らかになった。ちなみに、韓国は57%の普及率で、日本は、70万人程度である。

(b)IT基本戦略とe-japan戦略

 日本政府は、遅れた状態を取り戻すべく、新たな計画を立てている。それによれば、5年以内に3000万世帯が高速インターネット網に接続し、インターネット普及率は、人口の60%となり、バックボーンとして、30Mbpsから100Mbpsの光ファイバー網が整備されるという。

(c)教育分野の情報化

 教育分野では、学校のIT教育体制と情報生涯教育の充実、またすべての図書館にインターネットの常時接続が実現される。これらは、昨年の沖縄サミットの合意事項でもある。さらに、これを実現するためには、職員の再教育が必要である。

(3)地方分権・地方自治と図書館

 地方分権が進められ、図書館などの補助金の規定等が変更になり、他方、図書館に関しては「望ましい基準」が制定される。住民自治の図書館のあり方が、これから模索されることになる。


2,図書館の情報化あるいは電子図書館の構想

 昨年の10月、生涯学習審議会が、「新しい情報通信技術を活用した生涯学習の推進方策について」をまとめ、その中では、図書館は、地域の情報拠点としての役割、新しいサービスの創出がもとめられている。

 これを受けて、地域電子図書館構想協力者会議が12月に「2005年の図書館像~地域電子図書館の実現に向けて」をとりまとめた。

 電子図書館を作り出す努力は、国際的には1995年ブリュッセルで開かれた先進国情報閣僚会議で合意した11のプロジェクトの中のひとつ、電子図書館プロジェクトからはじまっている。幹事国はフランス、日本で、国内では国立国会図書館、学術情報センターなどを中心に作業がはじまった。公共図書館もこの流れと無縁ではない。


3,図書館の本来的な役割と国民・住民の期待

 これからの図書館のあり方を考えるために、図書館の本来のあり方について確認しておく必要がある。図書館は、(1)知識あるいは人類(地域住民)の知的遺産を保存し活用するという基本的な役割がある。これは、(2)住民の読書施設としての役割、(3)情報の拠点としての役割という2つの役割として具体化される。特に「(2)」は、公共図書館として忘れてならない役割である。


4,期待にこたえるためのさまざまな方策

 これからの公共図書館は、住民の期待にこたえるために、いくつかの方策を必要としている。それらを列挙すると、(1)経営の効率化と透明性を高める、(2)住民参加・住民ボランティアの受け入れ、(3)事業評価方法の確立、(4)学校との連携、(5)地域ネットワークの形成、(6)情報通信機器の整備と活用方針の確立、(7)新しいサービスの創出、(8)職員の再教育;継続的な教育などである。そのほか、著作権法の改正への働きかけなどもある。図書館の実務に即した改正が望まれる。たとえば、レファレンスサービスにおける典拠資料の部分のデジタル化と送信は、ぜひ実現してもらいたい。


5,まとめ

 最後にまとめとして、いくつか申し述べたい。

(1)今後、住民自治に基づく図書館運営という基本をふまえて、新しい図書館のあり方が模索される。住民に対して図書館サービスの目的、意義をきちんと説明できるようにしたい。現在、図書館のサービスについては、知識人を中心に根強い批判がある。1970年代は、「女・こどもの図書館」というきわめて問題な批判があったし、1980年代に入ると「無料貸本屋」という批判があり、最近はレファレンスの充実に対しては、「調べものは自分でやるものだ」というものがあり、これらは図書館の役割を十分にふまえて、説得して、前進していかなくてはならない。

(2)本は使われてこそ価値を生み出すということである。これは明治30年代に早稲田大学の初代館長市島春城が唱えたもので、本は、書架に置かれていても何の価値もない、人々の手に渡り読まれてこそ価値があり、社会の中でお金に換算できない価値を生むものだということである。公共図書館は、地域の中で、住民に本を手渡すことで、無限の価値を生んでいるということである。

(3)図書館は地域の中で知恵を生み出す源泉である。現代社会は、知識が知恵を生み出すことが求められている。地域の情報拠点である図書館は、誰でもが自由に知識にアクセスし獲得できるという意味で、知恵を生み出す源泉であるといえる。

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