[新板鬘尽くし(しんぱんまげづくし)
歌川芳藤(うたがわよしふじ) 画 弘化4年(1848)~嘉永5年(1852)刊 東京誌料 576-C1-2

 画面下部には、楽屋でくつろいでいる素顔の人気役者の似顔絵が、上部には役者の似顔絵の周辺に様々な役どころの鬘が描かれています。この絵は幕末に流行した玩具(おもちゃ)絵の一つで、着せ替え絵、または切り抜き絵とも言われるもので、鬘を切り抜き、役者の髪型を着せ替えて楽しみました。


 この絵に描かれている役者は八代目市川団十郎です。彼は歴代の団十郎と異なり、面長の美貌を持つ役者として人気を博しました。市川家のお家芸「助六」の鬘も用意されています。
 作者・芳藤は幕末から明治期にかけて活躍した絵師で、『東京築地ホテル館図』などの明治の文明開化の様子を描いた開化絵も数多く描いていますが、芳藤がもっとも得意としたのが玩具(おもちゃ)絵です。そのため「おもちゃ芳藤」とも称されていました。
 玩具絵は、子供たちが遊んで、使い終われば捨てられるというものだったので残されているものは少なく、その意味でも貴重な資料と言えるでしょう。

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