役者似顔早稽古(やくしゃにがおはやげいこ)
歌川豊国(うたがわとよくに)(初代)画 文化14年(1817)刊(加5990は後修) 東京誌料 5714-23 加賀文庫 加5990

 役者絵の名手・初代豊国の手による歌舞伎役者の似顔絵の書き方の指南書です。このような本が作られるほど役者絵は人気がありました。


 役者の舞台姿や日常の姿を描く役者絵は、明和年間頃(1764~1772)から似顔で描かれるようになります。現代のブロマイドと同様の役割を果たし、大量に制作・販売されていました。
 本書はその役者の似顔絵を描くための手引き書として、売れ行きもよかったようです。五代目市川団十郎(右)を、後の版では七代目(左)に差し替えていることからも、長い間売られていたことがわかります。「全て人の面を描くに、まづ鼻より先に描くべし。次にこの図のごとく口二、眼三とその順に描くべし。・・・」と、わかりやすく手引きしています。
 ほかにも、似せて描くためのポイントを図示した「役者似顔略画大概」、種々の鬘の例を挙げる「舞臺鬘大体」、裸体の絵の上に衣裳を着せ、それを図示した「人物支体衣紋之画法」などの解説が載っています。

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