文学万代の宝(始の巻・末の巻)(ぶんがくばんだいのたから)
一寸子花里(いっすんしはなさと)画 弘化年間(1844~1848)頃 東京誌料 3920-C1-1・2

 寺子屋の授業風景を描いた二枚続きの錦絵です。「始の巻」では男性の師匠が、「末の巻」では女性の師匠がそれぞれ教えていますが、子どもたちの多くは思い思いの行動を取っていることがわかります。


 江戸時代の寺子屋は、生徒は必ずしも先生の方を向いて座るわけではなく、教科書も、生徒たちの年齢もばらばら、出席するのも欠席するのも自由でした。
 この絵の子どもたちも、おとなしく勉強している子どもはほとんどいません。筆でいたずらをする子、とっくみあいをする子、人形で遊ぶ子など実に様々です。また「末の巻」の女性の師匠の後ろに描かれている書物から、読み・書きだけでなく、華道や茶道、香道なども教えていたことがわかります。
 とはいえ、寺子屋では、道徳や行儀、礼法などについても厳しく指導しており、いたずらがあまりにも過ぎると立たされる、正座させられるなどの罰則規定もあり、教室内には一定の秩序があったようです。

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