江戸名所百人美女 湯島天神(えどめいしょひゃくにんびじょ ゆしまてんじん)
歌川豊国(うたがわとよくに)(三代)、歌川国久(うたがわくにひさ)(二代)画 安政4年(1857)刊 東京誌料 025-C1-32

 『江戸名所百人美女』の一枚です。右上の小さな枠の中に描かれた絵(コマ絵と言います)には湯島天神の風景、そして錦絵中央の美人は手習いの稽古中です。湯島天神といえば学問の神・菅原道真を祀る神社です。学問と美人を組み合わせるという趣向を凝らした錦絵です。


 美人も名所も浮世絵の人気のテーマですが、『江戸名所百人美女』の連作はそれらを組み合わせ、美人を主に、名所を背景や小さなコマ絵にして、1枚の絵としています。三代豊国が美人画を、初代豊国の弟子で美人画を得意とした国久などがコマ絵を描いています。名所の風俗と関連を持たせることで、美人画に新たな趣向を加えたのです。
 この作品は湯島天神という名所と美人を組み合わせたものですが、湯島には幕府の学校・昌平坂学問所もありました。天神社の祭神・菅原道真が学問の神様として広く参詣されるようになったのは江戸時代のことと言われていますが、学問の神社つまり湯島=学問というイメージは天神社だけでなく幕府の学校もあったからこそ、さらに強まったのでしょう。

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