的中地本問屋(あたりやしたぢほんどいや)
十返舎一九(じっぺんしゃいっく)作画 享和2年(1802)刊 加賀文庫 函58-14

 江戸時代のベストセラーの一つ『東海道中膝栗毛』の作者として有名な十返舎一九の手による黄表紙で、画面からは、当時の本の販売風景を知ることができます。


 「地本問肆」とは、江戸独自の錦絵や草双紙を出版・販売した店のことです。本書はその地本問屋が刊行した本が大いに当たったというのを、「あたりやした」という江戸語で、黄表紙のタイトルにしています。
 内容は、地本問屋・村田屋の主人が怠け者の作家・十返舎一九に怪しげな薬を飲ませると、たちまち原稿が出来上がり、それを版木に彫り摺って売り出したところ、飛ぶように売れ、一九は大好物の蕎麦を振る舞われるというものです。この本には彫りや刷り、摺り上がった各紙を折鞍(おりくら)に置いて折り目をつけ、各丁ごとに並べたものを丁の順に抜き重ねて一冊にまとめる「丁合をとる」作業など、版本が作られる過程、そして販売の様子までが細かく描かれています。

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