南総里見八犬伝(なんそうさとみはっけんでん)
曲亭馬琴 (きょくていばきん)画 文化11年(1814)序~天保13年(1842)刊 東京誌料 476-29

 江戸時代後期、上方で生まれた、伝奇的要素の強い「読本」と呼ばれる形式の文芸作品が江戸でも流行しました。その読本の代表的な作品が馬琴の手による『南総里見八犬伝』です。28年にわたって書き続けられた近代以前の最長編小説でもありました。


 『南総里見八犬伝』は戦国時代、安房(千葉県)を拠点として活躍した房総里見氏の歴史を題材にして、曲亭馬琴(1767~1848)が書いた小説です。文化11年(1814)に最初の5冊を出版してから、全98巻106冊を刊行し終えたのは天保13年(1842)のことでした。
 作者・馬琴は原稿料のみで生計を立てることができるようになった最初の職業作家とも言われていますが、『八犬伝』の人気の高さは、刊行中からすでに歌舞伎の演目になったことからも窺うことができます。
 『八犬伝』の執筆途中、馬琴は失明し、息子の嫁のお路に字を教えながら口述筆記で完成させたという逸話も残っています。馬琴は、挿絵の素案も自分で作り、当時の一流絵師である柳川重信や渓斎英泉らが担当した挿絵も評判を呼びました。

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