五十四帖源氏壽語六(ごじゅうよんじょうげんじすごろく)
楳素亭(ばいそてい)画 安政4年(1857)刊 東京誌料 4574-S8

 『源氏物語』の最初の帖・桐壺を振り始めとし、最後の帖・夢浮橋まで五十四枚の絵札を巡る双六です。中央の上がりは美しい干菓子の数々。各札には、巻の名前と源氏香、巻名にちなんだ絵が描かれています。


 双六の絵には、桐壺には桐、夕顔には夕顔の花、葵には葵の葉など直接的なものを描いているものと、松風では光源氏と明石の上を結ぶ琴から、琴柱と琴爪の袋を描くといったように内容や言葉からの連想で描いたものがあります。このことからも当時の人々がいかに『源氏物語』をよく知っていたかがわかります。
 このように絵双六という遊びの世界にも、源氏物語は素材としてよく取り入れられています。『偐紫田舎源氏』に描かれた挿絵から生れた「源氏絵」といわれる錦絵を各コマに取り入れたものや、源氏五十四帖の巻名に、源氏香という香木をあてる遊びから生れた図を伴ったものも多くあります。また一見すると双六のようですが、源氏絵合の名で、紙面に記された巻名や源氏香の上に札を置いていく遊びもありました。しかし残念ながら現在では札が失われているケースがほとんどで、すべて完全な状態で残っているものは少ないようです。

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