吾妻曲狂歌文庫(あずまぶりきょうかぶんこ)
北尾政演(きたおまさのぶ)画 宿屋飯盛(やどやのめしもり)撰 天明6年(1786)刊 加賀文庫 加7302

 江戸時代後期を代表する狂歌師50人の肖像に狂歌を添えて描いた彩色刷の絵本です。絵は北尾政演(戯作者名は山東京伝)の手によるもので、狂歌師を王朝歌人風に描いています。


 『吾妻曲狂歌文庫』は、当時新進気鋭の浮世絵師・北尾政演(山東京伝)、撰者・宿屋飯盛(本名は石川雅望 いしかわまさもち)の手によるものです。本書を出版したのが、後に歌麿や写楽を売り出した人物として有名な蔦屋重三郎でした。彼にとってもこの本の成功は、後に数多くのベストセラーを生み出す版元になるきっかけとなりました。
 狂歌とは社会風刺や皮肉、滑稽を盛り込み、五・七・五・七・七の音で構成した和歌形式の歌のことですが、その絶頂を迎えるのが天明期(1781~1789)のことです。絶頂期を支えた狂歌師たちには、武士も町人も、さらに江戸っ子もいれば地方人もいました。身分や地域を越えたネットワークが形成されていたのです。

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