千代田の大奥 猿若狂言(ちよだのおおおく さるわかきょうげん)
楊洲周延(ようしゅうちかのぶ)画 明治28年(1895)刊 東京誌料 618-C1-7

 大奥で行われていた猿若狂言の様子を描いています。猿若狂言とは初代中村勘三郎が得意とした狂言のことで、画面中央の女性が手に持っているのが道化役・猿若人形です。


 『千代田の大奥』は、楊洲周延(橋本周延)の手による、江戸城(別名・千代田城)大奥の年中行事や奥女中たちの生活の様子を描いた揃い物です。明治27年から29年(1894~1896)にかけて40点が発行されました。版元福田初次郎。
 大奥の生活については記録を残したり、口外したりすることを禁じられていたため、よく分かっていません。歌舞音曲は、武家奉公に出る娘たちの必須教養であったとされ、江戸の町をあげての祭であった二月の初午(はつうま)には、大奥でも御次(おつぎ)や御三の間(おさんのま)などの女中たちが踊りや茶番狂言を演じ、御台所(みだいどころ)は御簾越しに鑑賞したと言われています。

印刷する