『落葉集』第5冊より「[武具之図]」(らくようしゅう ふぐのず)
  特別買上文庫 特2491-5

 ペリー来航に対する御固(おかため)(警固)を風刺した絵です。武具をフグの形に仕立てて、「武具」と「フグ」とを掛ける趣向を凝らした図柄で、兜の下の石垣は御台場を表現しています。


 ペリーの来航によって、幕府は海岸警備に力を入れるべく、諸藩を命じて沿岸地域に人を配置、台場(砲台)を設置させます。この絵には、3つの紋が描かれていますが、それぞれ川越藩松平家、長州藩毛利家、熊本藩細川家のもので、三浦半島の沿岸を警備した大名たちを並べたものと推測されます。 ペリー来航は幕府だけでなく、藩にとっても屋台骨(やたいぼね)を揺るがしかねない一大事であったのです。
 この絵が収録されている『落葉集(らくようしゅう)』は、御三卿の一つ田安家(たやすけ)の家臣・蜂屋茂橘(はちやもきつ)が編纂した随筆で、地震や火事などテーマごとに全9冊にまとめられています。5冊目には、ペリーやロシアの来航をテーマとして黒船の絵や狂歌、落し噺などが集められており、この絵もここに綴じられています。

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