東都名所 両国花火ノ図(とうとめいしょ りょうごくはなびのず)
歌川広重(うたがわひろしげ)(初代)画 天保年間(1830~1844)末刊 東京誌料 0421-C93

 毎年5月28日には、大川(隅田川)の川開きに合わせて、大々的に花火が打ち上げられました。両国橋から、川に浮かべた納涼船から、花火見物に大勢の人々が集まりました。


 隅田川の夏を彩る両国花火大会。その起源は享保18年(1733)にまで遡る(さかのぼる)ことができます。八代将軍・吉宗はこの前年に起こった飢饉の死者への供養と悪病退散を願い、両国において水神祭と施餓鬼会(せがきえ)を行いました。その際に花火を打ち上げて川開きも行ったことがその始まりと言われています。
 画面には、墨田川に浮かべられた納涼船や屋形船が数多く描かれています。今でも屋形船から両国の花火を見ることができますが、当時、船遊びは裕福な武士や町人のみに許された贅沢(ぜいたく)な遊びでした。川岸からうらやましく眺めていた人も大勢いたことでしょう。
 庶民も金持ちも関係なく、どの場所からも無料で見ることのできる両国の花火は、今も昔も大勢の人がつめかける江戸の夏の風物詩と言えます。

印刷する