意勢固世身見立十二直 破 神無月夷講 暦中段つくし(いせごよみみたてじゅうにちょく やぶる かんなづきえびすこう こよみちゅうだんづくし)
歌川豊国(うたがわとよくに)(三代)画 弘化4(1847)~嘉永元年(1848)頃刊 東京誌料 074-C6-10

 10月20日に江戸の商家が、得意先や親戚を招いて商売繁盛を祈るために催すえびす講の食卓をコマ絵(枠内の絵)に入れ、破れた手紙の前でお酒を飲む女性の姿を描いた作品です。


 10月は神無月(かんなづき)ですべての神様が出雲に集まるなか、江戸で留守を守る神様がいます。それが「えびす様」です。えびす様は商売繁盛の神様ですが、えびす講が行われる日は、商家では店を早じまいし、えびす様や大黒様に鯛、お神酒(みき)、餅、果物などを供え、盛大な祝宴を催したのです。
 では描かれた女性は何を意味しているのでしょうか。この絵のタイトルに「破」とあります。「破」とは暦の吉凶占い「十二直」の一つで、この日に行う契約や交渉、相談などは凶、さらに婚礼は大凶という意味です。
 画面にある文字には、この日に逢う約束をしていたが、逢えないという返事が来て、悲しみのあまりお酒を飲んでしまったとあります。えびす様のように一人残された身の上を悲しむ女性の様子が描かれているのです。

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