冬の宿 嘉例のすゝはき(ふゆのしゅく かれいのすすはき)
歌川豊国(うたがわとよくに)(三代)画 安政2年(1855)刊 新収資料 和-別134

 屋内の大掃除をして神棚をはらい清める年末恒例の行事、煤払い(すすはらい)の様子を描いた錦絵です。江戸時代、煤払いは12月13日に行うことが定められていたため「十三日節供(せっく)」などとも呼ばれる一種の神事でもありました。


 煤払いの楽しみは終わった後にあります。この絵にも重箱入りの握り飯や煮しめを人々が食べている様子が描かれているように、掃除の後には「納めの祝い」と称して、食事や酒が振る舞われ、時には胴上げや隠し芸なども行われていたようです。
 実は、この錦絵は煤払いの光景を描いているだけでなく、もう一つ意味があると言われています。
 この錦絵が刊行されたのは安政の大地震の翌月、安政2年(1855)11月のことです。左図の背景に浅草寺の屋根や五重の塔が見えることから猿若町の様子を描いたもので、大地震後の混乱した芝居町の役者達の無事を人々に知らせるために制作されたと言われているのです。中村翫太郎、岩井粂三郎といった人気歌舞伎役者を描いた見立絵でもあったのです。

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