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B1へようこそ! 〜資料準備の現場から〜

2024年3月作成

第5回 雑誌の収集と整理

雑多な内容だから「雑誌」?

 この記事をご覧の皆さまは、「雑誌」にどのような印象をお持ちでしょうか。本に比べるとたいていは薄い、判型も大きくカラフル、グラビア写真があって、広告もいっぱいある、本屋さんでは本とは別の棚で表紙を見せて売られている、でも本屋さんに置かれている時間は短い、うっかり発売日を忘れていたら、欲しかった号が売り切れていた......なんて経験をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 では、読み方はいかがでしょう。端(はし)から丁寧に全部の記事を読むという方もいらっしゃるでしょう。でも、お気に入りの作家の連載小説やエッセイを読むついでにほかの記事を読む、新聞広告で見て気になる記事をつまんで読むという方のほうが圧倒的に多いのではないでしょうか。
 そして、家庭では散らかると邪魔にされ、最後は束にくくって資源ゴミとして処分される運命......。処分する前には必要な記事のページだけをちぎって取っておく、という私のような保存をしている方も多いかもしれません(雑誌名と巻号、年月を書き忘れると、あとで後悔します。)。「雑誌」とは、その時代の「種々雑多な内容を掲載している出版物」というのが本来の意味なのですが、個人的には「雑に取り扱われることから雑誌だよな」と感じることもあります。

図書館における雑誌の位置づけ

 ところが、都立図書館での「雑誌」といえば、「雑に」なんてとんでもない。とても気を使って取り扱われています。
 ひとくちに「雑誌」と言っても、書店に置かれて誰もが買える一般雑誌、業界団体や学会・協会などが出す会員などに向けた専門雑誌・学術雑誌、大学が発行する紀要(論文集)、特定地域の情報を掲載するローカル誌など、軟らかいものから硬いものまで様々な種類があります。共通しているのは「号、年月日を追って順に刊行される」こと。
 このように同一のタイトルのもとで、巻号を追って順に、終期を決めずに継続的に出版される出版物を「逐次刊行物」といいます。週刊、隔週刊、月刊、隔月刊、季刊(年に4回)、半年刊、年刊など、刊行頻度も様々です。新聞に似た、日刊の雑誌もあります。
 個人では買い忘れたといってもがっかり〜としかなりませんが、都立図書館での収集もれは大問題です。号が飛んでしまっては、その号を必要とするお客様(個人で買い忘れた方も来るかも?)をがっかりさせることになります。時代を映す鏡ともいえる雑誌。硬軟、刊行頻度も様々な雑誌のすべての号を、継続してもれなく集め、後代に伝えていくことこそが、都立図書館の使命なのです。

都立図書館の雑誌

 都立図書館では、多摩図書館マガジンバンクを雑誌のメイン所蔵館としています。東京に関する雑誌や児童青少年向けの雑誌を除くと、多摩図書館では約19,000タイトル、中央図書館では約3,600タイトルを所蔵しています(すでに刊行が休止したタイトルも含みます。)。
 データの登録や装備などの受入処理は、多摩図書館マガジンバンク所蔵の分も、原則として中央図書館でまとめて行っています。
 そして、都立図書館の雑誌は、原則として、多摩図書館マガジンバンクで長期にわたり大切に保存されていきます。

雑誌にかかわる毎日の業務

 都立図書館での雑誌の収集方法は、「購入」と「寄贈」の二通りあります。
 まず、購入分について。中央図書館には書店で販売されている雑誌を中心に、その日発売される雑誌が毎日朝一番で、契約書店の営業さんによって届けられます。専門雑誌や学術雑誌でも書店が取り扱える雑誌については、毎日午前中に書店から2箱程度、郵送で届きます。多摩図書館マガジンバンクと中央図書館で提供される雑誌を合わせると、購入分のその数は、毎日100〜120冊にもなります。
 さらに学会、団体、企業や大学などが刊行し、都立図書館に直接郵送するかたちで寄贈していただく雑誌が毎日60〜70冊届きます。
 いずれの雑誌も原則としてその日のうちにデータを登録し、バーコードなどの装備を施して受入処理します。毎日、時間との戦いです(中央図書館で受入処理した雑誌が多摩図書館に届くのは翌日になることもあります。)。
 雑誌はデータを登録するとすぐに蔵書検索(OPAC)でヒットするので、装備が終わらないうちにお客様から「読みたい」と請求されることもしばしばあります。この雑誌を待ちわびていた方がいると思うと、毎日の登録作業にも励みが出ます。
 以上は日本語の雑誌についてですが、ほかにも外国語の雑誌が契約書店から週に1〜2回、50〜60冊届くほか、海外の版元から直接郵送で届く雑誌もあります。
 購入分・寄贈分とも、今届いた号を登録しようとすると、時に前の号が届いていないことがあります。「欠号」と呼びますが、このような収集もれはすぐに手配をしないと、入手できなくなる場合があります。例えば週刊誌などは、次の号が出ると前の号はすぐに書店から撤去されてしまいます。発行元にお願いして、やっと補充をすることもしばしば。週刊や月刊などの刊行頻度ごとに、届いていない雑誌をピックアップし、補充のために送ってくださるようメールや電話でお願いする作業も毎日行っています。
 刊行ごとに梱包して発送するという多大な手間をかけ、毎号欠けることなくきちんと図書館に届けてくださる版元(寄贈元)さまには、それがどれほどありがたいことか、心から御礼申し上げます。

表紙ちがい版、付録ちがい版、サイズちがい版

 雑誌の市場は近年縮小傾向にあります。2006年には3,600以上あった雑誌の発行タイトル数は、現在では2,500を割っています。また、新しく創刊される雑誌の数は、ピーク時の1985年に245もありました。現在、創刊雑誌の数は30にも届かず、休刊・終刊する雑誌の数が大幅に上回っている状況です。何十年と継続刊行されてきた老舗雑誌も例外ではありません。100年雑誌である『週刊朝日』の昨春の休刊は、たいへんショックでした。もともと雑多な内容である雑誌は、さらに雑多であり、かつ検索性に優れたWebコンテンツには太刀打ちできないのか、と思ったものです。
 紙媒体では休刊し、Web上に移った雑誌も多く見受けられます。ただそうなると図書館での収集対象にはなりませんので、都立図書館で継続的に収集しているタイトル数が減ることになります。減った分を補うために新しい雑誌を入れたいところですが、雑誌が創刊されないことにはお手上げです。
 一方、市場は縮小傾向であるとはいえ、雑誌の出版社はいろいろな工夫をして、読者をつなぎとめる努力をしています。例えば、中身はおなじ内容なのに表紙だけが男性アイドルグループ、女性アイドルグループで違う号数がついているもの、あるいはおなじ号でも付録がある号とない号、または異なる付録がついていて、読者が選べるようになっているもの、さらにおなじ号でもサイズ違いで大小判を刊行し、小はバッグに収まるサイズであることを売りにするものなど。中身が同じであれば、どれか一つのタイプのみを収集すればよいと思いつつ、号数が違っていれば収集しないと欠号のようにも見えてしまうことから、図書館にとっては頭の痛い存在ですが、販売のためのこの努力には頭が下がります。
 また、バスケットボールの雑誌でありながら、増刊号でラグビー・ワールドカップやテニスの世界大会を扱うなど、読者のすそ野を広げようとする販売戦略がまざまざと見えるものもあります。このような増刊号は、ムック(Mook:BookとMagazineのいいところどりの出版物)として出版されることが多く、書店では雑誌よりも長く置かれ、長く売られています。

雑誌の価格

 都立図書館、特に雑誌のメイン所蔵館である多摩図書館マガジンバンクでは、その雑誌が刊行されている限りは継続して収集したいところです。それが許されない最大の要因は、なんといっても価格。1冊では小さくとも、週刊誌なら年間50冊以上、それが何十年と続くとなると、金額はどんどん大きくなります。新規創刊雑誌を収集する際には、先のことを見据え、価格とにらめっこです。版元にお願いして、寄贈していただくこともあります。
 国内発行雑誌も用紙代や物流コストの上昇で、今年は値上がり傾向にありますが、現在いちばん頭が痛いのは、海外発行雑誌(洋雑誌)の値上がりです。もともと洋雑誌は毎年10%程度の値上がりを見込む必要がありましたが、ロシアのウクライナ侵攻による物流ルートの変更・コスト増と、昨今の円安により、前年比40%以上の値上がりとなってしまいました。物流は落ち着いたものの、円安は収まる気配がなく、今後の洋雑誌の収集に心配が募ります。

最後に

 先ごろ、第二次世界大戦前に刊行された雑誌について、大量にデータ登録する機会がありました。古色蒼然とした昭和初期発行の雑誌では、自分の親が生まれた頃の世相や街で流れた流行歌、冗句や風刺画などを読むことができ、不思議な感じでした。当時の人々が今と同様に雑誌を定期的継続的に発行し、必要とする読者に届けていたこと。以降、戦後80年近くになる現在でも雑誌はまだ、時代を映す鏡の役割を担ったまま変わらずに存在し、作り手と読者をつないでいること。雑誌が人の手によって営々と受け継がれてきたことに対し、敬意と感謝の気持ちでいっぱいです。
 紙媒体での休刊を決めた雑誌が、それを告知する挨拶の中で「デジタル時代の現在、(紙の)雑誌の役割はすでに十分に果たされた」「今後はWebで新しいあり方に挑戦したい」と語る言葉が印象に残っています。今後のあり方を模索し、発展させようとする出版元に敬意を送りながら、それでも図書館では、紙媒体としての雑誌がこの先もこのかたちで長く続くこと、多くの読者が図書館で求める雑誌、あるいは思いがけない雑誌に出会い、魅せられ続けていくことを願ってやみません。

(担当:司書歴42年/新聞雑誌収集担当)

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