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東京都子ども読書活動推進フォーラム講演会(講師:杉山亮氏)、東京都子ども読書活動推進事業・講演「大草原の小さな家」(講師:谷口由美子氏)

東京都子ども読書活動推進フォーラム講演会

講師:杉山亮氏

平成16年10月9日(土)、東京都庁大会議室において平成16年度東京都子ども読書活動推進フォーラムが開催された。
当日は、大型の台風が首都圏に接近し開催が危ぶまれたが、熱心な親子連れの参加があり、前半は小平市文庫連絡協議会(平成16年度文部科学大臣表彰受賞)と山の木文庫(平成15年度同賞受賞)の2団体の実践報告とおはなし会の実演、後半は杉山亮氏の講演が予定どおり行われた。杉山氏はおもちゃ作家・児童書作家として活躍されている。

講演会

杉山亮氏講演報告

杉山氏は、講演に入る前に、創作「ヒツジ」と怪談「番町皿屋敷」を語られた。
「ヒツジ」は、ヒツジが太った女の人に化身して尋ねてきて、羊毛100%の見事なセーターを編んでくれる、見るなといわれていたのに、セーターを編んでいるところを覗いてしまうという話で、日本の昔話「ツルの恩返し」を下敷きにしたパロディ。途中で、気づいた大人が笑い出し、子どもたちの中からも笑いがおきていた。
「番町皿屋敷」は、家宝の皿を割った女中のお菊が、主人の青山主膳に手打ちにされて化けて出てくるという本格的な怪談話。
2本の異なる面白さを味わった後、子どもと本をめぐる講演に入った。

子どもと本をめぐる話題

氏は、子どもと本をめぐる話題として、第1に「物語」はいいものだということ、第2に「物語」の容れ物としての「本」のよさ、第3にどういう本がよいのか、そして第4に、どうやって子どもに「本」を手渡してゆくかをあげられたが、今回の講演では、第4の「具体的にどうやったら子どもたちに本を手渡せるのか」という点に的をしぼられた。

面白いということの変質

今、本を読まなくなったといわれた子どもたちが親になっている。その子どもたちの世代は、もしかすると「面白い」ということがどのようなことかわからなくなっているのではないか。面白さを感じる、子どもなりの教養とかパワーがどこかにいってしまっているのではないかと言われる。
話をしていても、以前なら面白くて笑うような所で、今の子どもたちが反応を示さなくなっていて、全く手ごたえがない。すると、作品を作る側は、駄洒落や、いじめネタ、下ネタといったわかりやすいところで面白がらせようということになってしまう。
「ヒツジ」という話は、「ツルの恩返し」が聞き手の共通の教養としてあって重層的な笑いを生んでゆく面白さがある。演壇から見ていると、聞き手が「ツルの恩返し」が下敷きになっている話だと気が付くのに時間差があって、笑いにずれがあるのがよくわかるという。そういった、豊かに絡み合って最後の最後まで来ておかしくなって、こみ上げてくるような笑いは今の子どもたちには伝わりにくくなっている。
物語の「面白さ」を感じ取る力が落ちてくると、面白そうだと判断するカンが働かなくなる。そうすると本を選ぶ時に「売れている本かどうか」ということを基準にすることになってしまう。

大人が子どもに「おはなし」を

杉山氏は、本の読み方や面白さを知らない子どもたちに、もう1回、本の読み方を教えなければならないと言われる。その方法とは、少し後退するようではあるが、大人が子どもに「おはなし」を語ることである。
文字だけの物語の情景を空想するのは辛いが、耳で聞いていると自分で文字を読む必要がないので、情景を空想することが楽にできる。それが、物語の情景を思い描いて楽しむという「本の読み方」を取り戻す基本だといわれた。
学校でも、先生が連続して面白い物語を読むと、そのクラスは物語を共有することになり、子どもたちなりの新しい笑いや教養がクラスに生まれる。読み続けるのは大変だが、子どもたちは面白い話をしてくれる先生を好きになり信頼するようになる。好きな先生が教えてくれる授業は納得できるようになり、先生にとってもプラスになるのではないか。

おはなし会のすすめ

氏は、図書館や文庫でやっている「おはなし会」をあちこちでやることを薦められた。「おはなし会」で大人と子どもが一緒に聞くと、子供たちは聞くことの先輩である大人を見ならって聞き上手に育ってゆくことも紹介された。
大人と同席する中で、聞くときのマナーも覚える。席を立つときは「おはなし」の合間にゆくとか、周りに気を配って聞くというようなことを、大人を見ながら覚えてゆく。
「おはなし」という方法で、「面白い本」という商品をもっと子どもたちに宣伝してゆこう。「馬を泉に連れてゆくことはできるが、水を飲ませることはできない」というけれど、泉に行く道に階段をつけるとか、この水はおいしいという看板を立てるとか、宣伝の方法はたくさんあるはずだと述べられた。
「おはなし」は本を宣伝するソフトである。そして、都でも区や市でも、そのソフトをそれぞれの人がそれぞれの立場でやってゆくという具体的なことでしか、子どもと本の関係は変わっていかないのではないかと述べて講演を締めくくられた。

東京都子ども読書活動推進事業・講演

「大草原の小さな家―音楽と歌で楽しむ」
講師:谷口由美子氏

平成16年12月12日(土)、東京都多摩教育センターホールで、東京都子ども読書活動推進事業・講演「大草原の小さな家―音楽と歌で楽しむ」を開催した。
ローラ・インガルス・ワイルダーの児童文学作品を取り上げ、第1部は物語の舞台となったアメリカ各地のスライドを紹介しながらの講演、第2部は作品中で歌われている歌や音楽の演奏を交えての演出で、会場が一体になって楽しんだ。会場ロビーでのワイルダー関連資料の展示も好評だった。
講師の谷口由美子さんは、英米児童文学の研究家で翻訳家。ご自身、子どもの時にワイルダー作品に出会って深く心を動かされ、物語の舞台を何度も尋ねてこられた。
当日は、あいにくの雨で寒さも厳しかったが、予定を上回る280人の参加者があり、楽しいひとときであった。以下、講演の要旨を報告したい。

講演

ローラの物語

これはアメリカの開拓時代を生き抜いた少女ローラと、父さん、母さん、姉さんのメアリー、妹のキャリー、赤ちゃんのグレースの物語です。原作を書いたのは主人公のローラ・インガルス・ワイルダー。ローラはウィスコンシン州ぺピン、1867年生まれ、1957年90歳のときにミズーリ州マンスフィールドで亡くなりました。
ローラは60歳を過ぎてから、楽しかった少女時代の物語を「大きな森の小さな家」(ローラが5歳のときの物語)、「農場の少年」(後にローラの夫になったアルマンゾの物語)、「長い冬」(シリーズの最高傑作で、7ヶ月間の吹雪の物語)など10冊の作品に書きあげました。この物語を全部読むことによってローラが5歳だったときから、娘が生まれた4年間の新婚生活までがわかるというわけです。
テレビで放映されたドラマは、原作と違っていますが、大草原の自然に立ち向かってゆく精神や、家族の絆を何よりも大切にする気持ちがドラマの根底に素晴らしく現れているので、筋が少しぐらい違ってもとやかく言わないようにしようと思いました。

初めての出会い

私が小学校5年生の時、叔母が送ってくれた本の中に「大草原の小さな町」(岩波少年文庫 鈴木哲子訳)がありました。小学校の図書室には「長い冬」(同文庫)があって、それまで読んできた「赤毛のアン」や「グリム童話」とはとても違う話でした。甲府盆地に住んでいた私は、地平線のあるアメリカの大草原など想像もつかなくて、とても憧れました。

原作との出会い

大学生として留学したアメリカのキャンザスの図書館で、偶然に「大草原の小さな家」がシリーズで並んでいるのを見てとても驚き、いつか訳したいと強く思いました。
帰国して、ある日、本屋さんに行くと店頭に美しい本が並んでいました。それが、訳したいと思っていたあの「大草原の小さな家」(福音館書店)でした。大ショックでした。でも、若かったので思い切って訳者の恩地美保子先生にお会いしに行きました。先生はとても素敵な方で、ローラの物語を翻訳したときの裏話をたくさん聞かせてくださって、良いアドヴァイスもいただきました。
それは、ここにいる本好きの方にも是非お伝えしたいことですが、日本語を磨くためにはいい日本語、いい日本文学を読まなければいけないということです。これは最高のアドヴァイスだったと思います。日記をつけることも大切だとおっしゃいました。

アメリカの旅

1973年、私はローラの故郷を訪ねる旅に出ました。
ミシガン州デトロイトや「ローラ・インガルス・ワイルダーの部屋」のあるカリフォルニア州ポモーナの公共図書館などを訪ねました。
ローラの自筆原稿や、テープに吹き込まれたローラ自身の声も聞き、デスメットではローラ本人を知っている人から貴重な話を聞きました。帰国後、その旅を写真集「大草原の小さな家―ローラのふるさとを訪ねて」(求龍堂1988)としてまとめました。

翻訳について

翻訳のことばについて少しお話します。
「父さん、母さん」は原作では「パー(Pa)、マー(Ma)」です。当時でさえ古臭い言葉だったそうですが、ローラは実際に自分が使っていた呼び名を使いたいと強く言ったそうです。
岩波少年文庫の鈴木哲子訳では、当時の日本の子どもたちにアメリカの開拓時代についてあまり知識がないことも考えて、お百姓さん一家という意味で「とうちゃん、かあちゃん」とされています。
'70年代には、読者にもローラたちが本をとてもよく読む家族だということなどもわかるようになり、福音館書店の恩地美保子訳では「父さん、母さん」と訳しています。
ところが、実は1949(昭和24)年に日本で初めて「長い冬」が訳された時には、カタカナで「パー、マー」です。訳者は石田アヤさん。[コスモポリタン社版]
人によっては「パー」と言う言葉をいやな意味で勘違いする人もいるかもしれないし、出版社もそういうことにとても気を使います。私も岩波少年文庫の新版では、「父さん、母さん」と訳していますが、将来、もし全巻を訳すチャンスを与えられたら、原作どおり「パー、マー」と訳してみたいと思っています。

スライドと朗読と音

スライド紹介

小柄で知的なローラ、ひとところに腰を落ち着けることができない父さん、父さんの手綱をしっかり握っていた母さん、メアリー、グレース、キャシー、ローラより10歳も年上の夫のアルマンゾ、一家が暮らした小さな家やプラムクリークの土手の横穴の家、長い冬の間燃料にするために父さんと二人で一日中撚った干草、小麦粉を挽いたコーヒー挽き、楽しい音楽を奏でてくれた父さんのヴァイオリン、ローラの物語を磨き上げた娘のローズなどが次々に紹介された。

朗読

菅原真理子氏のオリジナル曲のピアノ伴奏を背景に、谷口さんのゆったりと穏やかな声でクリスマスのシーンが朗読された。

音楽

作品中の音楽を集めた「ローラ・ソングブック」の中から、「ヤンキー・ドゥードゥル」「ポンとイタチが逃げてった」「バッファローギャル」「グライムズじいさんの歌」「おおスザンナ」「星ふる今宵」など14曲の演奏と歌を楽しんだ。
最後に、歌手の森みゆきさんに「あわてんぼうのサンタクロース」の歌を特別にプレゼントしていただき、子どもたちも一緒に歌って講演会は楽しく幕を閉じた。

東京都子ども読書推進計画事業の一環として、都立図書館は、平成15年4月から都立図書館こどもペ-ジを開設しました。また、平成16年3月に、読書啓発パンフレット「子どもたちに物語の読み聞かせを」を作成しました。このパンフレットは、こどもペ-ジでもご覧になれます。

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